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『アイテム【晴明の護符】は呪い自体を無効にはできませんが、効果を抑える事ができます』
「効果ですか?」
『例えば私の場合は、戦闘時に発動してしまう呪いを、スキル使用時に限り呪いが発動するよう抑えてくれました』
なるほど、呪いの効果が及ぶ範囲を狭めるということか。
十分な効果だ。
「少しでも時間を稼げるのなら有り難いです」
僕はすぐに受け取ったチケットを破った。
特に光る事はなかったが、胸の部分が熱くなっていくのを感じる。
『もう効果は現れているはずですよ』
シャツをめくり胸元の数字を確認すると、60秒毎に変化していた数字が約90秒毎になっていた。
後で正確に計るとして、とりあえず60時間以上の猶予を得る事ができたんだ。
「アーツさん、本当にありがとうございました。僕は……」
『駄目ですよ。指揮官が自分の心境を容易く吐露するものではありません』
突き刺さるような鋭い視線だけど、不思議と温かみを感じる。
僕は逸らさぬようしっかりと見つめ返し言葉を発した。
「神殿ではよろしくお願いいたします」
『……さて、私も色々と準備をしなくてはなりませんね』
僕は恵まれている。
尊敬に値する人が近くにいるから。
今までこんなに心から人を尊敬した事が無かったかもしれない。
心が少し成長した証なのかな。
僕はもう一度アーツさんにお礼を述べ部屋を出た。
よし、忙しくなるぞ。
パスを取り出し目的地をコントロールルームに設定し直した。
光の指示通り歩いていくと前方からムッキーが走って来るのが見えた。
その表情はここからでもわかるくらい焦っている。
柚葉さんが無事だと言う事がわかって安心していたはずだけど。
『ふ、副社長、大変です! め、女神が消えたんです。きっとシャークの野郎が隠したんですよ! 畜生、あんな得体のしれない奴に預けたのが失敗だったんだ……』
隠した?
何のために。
興奮冷めやらぬムッキーは、ブツブツとシャークに対して恨み節を吐き出している。
「わかった。確認するから一緒に来てもらえるかな」
『はいっ!』
僕はムッキーと共にコンピュータールームに向かった。
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