509人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょ、ちょっと、何でアンタが!?」
『オ、オラ……』
開いた扉から現れたのはアルトだった。
この子を戦闘に!?
『私が推薦します。彼女を連れていきましょう』
「だ、駄目よ。この子を危険な場所には連れていけないわっ!」
『なぜですか? 年齢だって一つしか変わらない貴女だって行きますよね?』
「年齢の問題じゃ……」
まさか、アーツと意見が食い違うとは思ってもみなかった。
どう説得してよいのか迷っていると、哲二が私の代わりに口を開いた。
「神殿に参加できるのはクリアアイテムを所持しているSSランクチームのみです」
『でしたら、チームに入れてあげてください』
「途中で参加させてしまったら、他のプレイヤーに示しがつきません。身内だけ優遇するのか、そういった話になるでしょう」
ここにきてリーダーの私に、大勢のプレイヤーが最終決戦に行く為チームに参加させろと言ってきている。
断る理由として、哲二がレベル250は必要だと口外してしまった。
『困りましたね。アルトさん、今のレベルは?』
「197だっぺした」
いつの間に……私とそんなに変わらないわ。
「無理ですね」
意見の変わらない哲二にアーツさんが、
『神殿に到着するまで私が鍛えれば、少しは……』
『アーツざん、もういいだ。オラが自分で説得する!』
アルトは力強く言葉を続ける。
『雷斗さんは言ったでねーか。オラは奪われたもん取り返しにいくだけ。大事な仲間を取り戻すのに条件なんておかしいべ』
「皆アンタの心配しているのよ」
『自分の仲間は自分で取り戻すだっ!!』
何を言ってもきかない子供の様にだだをこねている。
それでも右手で眼鏡を押さえた哲二の表情は揺るがない。
「駄目だ。例外を認めたら示しが付かなくなる」
プレイヤーには厳しい現実を突きつけたばかり。
その自分が身近なプレイヤーだけを特別扱いしていたら指揮官として致命的だ。
アルトだけを特別扱いになど哲二が出来る筈はないわ。
最初のコメントを投稿しよう!