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か、過去を……観ているのか?
すぐに目の前は暗くなり、何処かへ引き込まれる感覚に陥(おちい)った。
そう、あの時と同じ。
この後オレは、ホテルバージニアに到着する。
――!!!!
ち、違う。何だここは。
意識が半分飛んでいるような状態。
ベッドに寝かされているようだ。
目に映るのは、高い天井。
古民家のような木造の一室。
囲炉裏(いろり)の向こう側には年配の男性が姿勢正しく座っていた。
誰だ?
上体を起こそうとしたが力が入らない。
するとそれを察知したのか、新たな気配が近づいてきた。
袴姿の二人の女性がオレの顔を覗きこんだ。
この女性達は……。
火山風穴で出会ったリアとアキラか!?
何でこんな映像が。
二人はオレの左右に移動し、両腕を拘束するように掴んだ。
≪気がついたようです≫
和装の男性は立ち上がり、ゆっくりとオレに近づく。
リアルな状況。
そう、実際に体験したような感覚が蘇ってきた。
これは映像を観ているんじゃない。
オレが体験した記憶だ。
≪時間がない、すぐに発動するぞ≫
≪はい、承知しました≫
和装の男は、無抵抗なオレの頭に赤黒く光る手をかざした。
【………………】発動。
≪鷹山くん、柚葉を頼む――≫
リアとアキラは柚葉のお父さんの部下。
ということは、この人は柚葉のお父さんなのか。
こんなこと、まったく記憶になかった。
現実世界からホテルバージニアへ転送される間に起こった出来事。
その記憶がそっくりそのまま抜け落ちている?
そういえば……。
あの時オレだけ一時間も遅れて転送されていた。
オレは、このゲーム世界に入る直前に柚葉のお父さんに会っていたということなのか?
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