勇者の役目②

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『ほれ、次だ、次っ!! 女だから手抜いてやったけど、今度こそ本気でやってやるっ!!』 ぶっ倒れていた神田はいつの間にか立ち上がっていて、槍を振り回し俺に合図を送っている。 サイクロプスの腕をまともに受け、口から血を吐くほどダメージを負ったクセに元気な野郎だ。 『イズミン、行こっ!!』 俺の肩をポンッと叩き、ふわふわと浮きながら通り過ぎていったのは滝澤。 学校の教室。おどおどとしていたイメージはどこにもない。 「だ、誰がイズミンだ!! 勇者をスライムみたいな名前で呼ぶんじゃねー!!」 あいつらも蓮と同じように……気持ちが、心が強いんだ。 どんな状況でも蓮は諦めなかった。 二人はこんな状況でも、前を向いている。 あいつ等が特別なんじゃない。 俺だって―― 同じ空間で学んだ俺が、あいつ等に劣るわけがねーもんな。 ここは戦場。 たった一度の失敗で絶望している暇なんてないんだ。 それに――今のは失敗じゃねぇ。 掴んだものも、ある。 「直樹、もう一度いくぞっ!!」 サイクロプス系のスキルは、発動までのディレイが長いので直樹は森に身を潜めている。 場所がバレないよう、発動直後に移動しているはずだ。 俺の声が聞こえる範囲内にいる事はわかっている。 俺は再び前を向き、気持ちを切り替えた時、上空からジュエルの声が。 『……直樹って、アレ?』 ――!!!! 傾けた杖が指し示した方向。高い木のてっぺんには直樹の姿が。 太い木の根で四肢を縛られている。 森の中に隠れていたのに、どうして……。 『――そう、その顔!! キミ、今絶望したでしょ?』 ジュエルは恍惚の表情を浮かべ俺を覗きこむように見下ろしていた。 まさか、この森……。 俺たちの周りは奴が発動した敵の炎によって木は焼かれ何もない。 直樹が身を潜めていたのは、その少し奥の森。 確かジュエルの属性は五行――木火土金水とかいっていた。 炎に包まれた敵。 雨雲を発生させ、豪雨を降らせた能力。 俺の電撃を吸い込んだ土。 周囲に広がる……森。 この森も奴のスキルか!? だとしたら直樹だけじゃない、森に入った佐藤達もやばいぞ。
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