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『ほら、絶望で声も出ない。いいよ、いいよ、その表情……』
こいつ、サディストか?
だったら、絶対に弱みを見せてはいけない。
って、怜香が言っていた。
こういう系に関しては知識の間、ジャンル【アブノーマル】が満点だった怜香に従ったほうがいい。
俺は顔を上げ答えた。
「絶望? んな訳ねーだろ。勇者はな、存在自体が希望なんだよっ!!」
【雷鳴】発動。
叫びながら剣を振りかざすと、そこへ天から落雷が。
帯電した勇者の剣を直樹に向け撃ち放った。
「お、おいっ……泉っ!!」
『拘束して電流を流すなんて、ありふれた拷問だけど、イイかも』
【魔法防御】発動。
俺の放った電流が直撃する寸前、直樹の体を薄い膜が覆った。
仲間のスキルくらい熟知してんだよ。
電流は直樹の体を駆け巡るが、魔法防御の膜によりダメージはない。
拘束していた木の根だけが焼き払われた。
「見たか、この野郎っ!!」
先日開発した格好良く見えるポーズを決め、再びジュエルを見上げた。
『ボクよりも、キミが仲間を見たほうがいいと思うけど』
――!!!!
触手に解放されかろうじて太い枝に引っかかっている直樹だったが、枝の根元が焼かれて今にも折れそうだ。
これじゃあ、状況はさっきよりマズイんじゃねぇか!?
俺は動揺を悟られないようマントを翻し、直樹に向け勇者の剣を向けた。
「――行けっ、下僕共っ!!」
勇者の台詞にしてはちょっとアレだったか。
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