シャーク・Kという男

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物理攻撃でダメージが与えられなくても、毒は効――!!!! 大きく目を見開いたレイドだったが、拡散した白い光沢を放つ蒸気が水銀だと気がつくのに時間を要しなかった。 『危ねーな、おい』 成人にまで変貌を遂げたレイドは左手の黒い円盤状のスキルで水銀を吸い取っていく。 水銀は影山に仕掛けた手口と同じ。 駄目だったか。 あん時も護衛に吸い取られたっけな。 全てのオーラを注ぎ込み発動させた水銀がなくなると、俺の血液が噴き出していく。 まだ……まだ、終わってねぇ。 闇が視界を狭めていく中、意識だけは断ち切られないよう唇を強く噛んだ。 『……面白い作戦ですね』 俺にトドメを刺そうとしたレイドの後方で、シャークが得物を振り上げている。 「む、無茶す……するな」 打撃では倒せないことをシャークだって分かっている筈だ。 まさか、俺を助けるため? 反応したレイドは振り向き、数珠丸に向けスナッチソードを振り上げた。 交差する二振りの武器。 閃光のような火花が散った後、赤く染まる刀身が宙へと舞った。 その刀身がスローモーションのように弧を描いていく。 シャークは天下五剣の一振り――両手で握る先の無い柄元に視線を落としていた。 数珠丸が折られた。 『…………。』 固まったままシャークは動かない。 俺は声を出そうにも、言葉がでなかった。 絶望という名の静寂が辺りを支配する。 そして―― 声変わりしたレイドの低い声が静寂を切り裂いた。 『GAME OVER だな』
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