520人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
===============
視点 ゼノン
===============
数珠丸が折られた勢いで、目深にかぶっていたシャークの帽子が吹き飛んだ。
赤茶色の少し長めな髪。鋭く光る眼光。
初めて見るその顔に見覚えがあった。
「お前、やっぱり……」
運営サイド。つまりプレイヤー達がいるフィールドの裏側。
【Kill Time】世界での過去の英雄――影山を楽しませた者の肖像画が飾られた廊下がある。
その多くが影山と似たような顔をしていた。
カトラスもしかり。
つまり、影山を楽しませ死んでいったK遺伝子プレイヤー達。
シャーク、やはりお前もそうだったのか。
『もう終(しま)いだろ? さっさと死ねっ!!』
レイドはスナッチソードを片手で振り上げた。
シャークはスキルも発動せず、新しい武器を出すわけでもなく、その場から動かない。
【土柱】発――
くっ、駄目か。スキルポイントがもうねぇ。
右上段から左下へ黒く長い剣が振り下ろされようとするが、シャークはまだ折れた数珠丸の柄を握ったままだった。
捨て身で行くしかないと、典太を握り締め飛びだそうとした、その時――
黄色い火柱が噴き出す大地に、キィィィンと金属同士がぶつかり合う音が響いた。
『テメェ……』
『…………。』
スナッチソードを受けたのは、赤いオーラが刀身となった数珠丸。
両者は鍔迫り合いなどせず、互いに刀を押し出すような形で離れた。
『……ようやく、この武器のキャップが外れたようですね』
シャークが持つ数珠丸からは、止まる事を知らない湧水にように赤いオーラが噴き出していた。
最初のコメントを投稿しよう!