第1話―私を極悪人にしてください―

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どこの世界に、極悪人にして下さいと頼み込むアホが居る 不良になりたいとか、そういう高校デビューを目論む人間も少なくはないだろうが極悪人となると話は別だろう。 いや、100歩譲って極悪人デビューを目論んでいることは認めよう。 そんなアホもこの広い世界に何人かは居るかもしれない。 ただ、ここで一つ失礼な解釈が浮かび上がる。 桐に頼み込むというとことは、桐を極悪人であると認識している事になるのだ。 いや、まぁそこも桐にとってはやぶさかでなないのだが。 だが、だ。 極悪人にしてくれと頼まれて「いいよー」と返答する奴は居ない。 特に極悪人と認めているなら尚更、何故頼み込めたのかが不思議だった。 人の頼み事を平気で拒絶できるからこそ、極悪人と呼ばれるのではないか なら、答えなど分かりきっている筈なのだが。 視線が合うと、彼女の方は照れ笑いを浮かべる 「いやぁ、すいません いきなり、おかしなことを。 断られることは承知なのですが、とりあえず先輩に付き纏うつもりなので報告がてらと思いまして。」 そこからの彼女は凄かった。 「実は私、幼い頃からずっと悪役に憧れていまして。 あ、雑魚には興味ないんです。 絶対的な強さを誇るラスボス的な悪役が大好きで。 ヒーローが主役のアニメや特撮を見ていても湧き上がるものが他の子達と違っていて 自覚してからはただひたすらに、悪役の良さを広めていく運動もしたのですが 中々、同志は集まらず。 とにかく私の気持ちを誰かにわかってもらいたいという執念が、そのうち成れるものなら悪役になりたいという願いに変わりまして。」
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