『雨の中の涙』

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── ─── ──── 目が覚めると、いつものフカフカした布団の上だった。 ボクはゆっくり伸びをしてから、走って下に降りていく。 階段は慣れた。 たまに転んじゃうけど、痛くない。 「あなた、ご飯出来たわよ」 下に降りると、優しい声が聞こえてきた。 ご飯よりも先に、ボクは走って声を掛ける。 当然、ご主人様にだ。 抱き締めながら、頭を撫でてくれるご主人様に、ボクはまた眠くなってしまった。 優しくて、暖かくて……。 でも、もう名前は呼んでもらえない。 “こーいしょう”……っていう病気で、ご主人様は喋れなくなっちゃったんだ。 あの日、何も出来なかったボクを──ご主人様を助けてくれたのは、今ご飯を作ってくれている女の人。 たまたま通りかかった女の人は、すぐに救急車を呼んでご主人様を助けてくれた。 あと一歩遅かったら、ご主人様、いなくなってたんだって……。
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