『雨の中の涙』

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背が高くて顔が見えない……。 さらに頑張って、今度は何度も飛んでみる。 「おまえ可愛いな。お腹減ってないか? 今暖かいミルク持ってきてやるからな」 しゃがみこんだ背の高い男の人は、ボクの頭を撫でて何処かに行っちゃった。 頭を撫でられたことが嬉しかったボクは、照れくさくなって、顔を隠すように丸くなる。 「名前は何にしようかな……」 男の人は、ボクの目の前に銀色のお皿を置いて、座りながら何かを考え始めた。 そういえば、ご主人様は名前なんて付けてくれなかったなぁ。 お母さんの名前はあったのに……。 目の前に置かれた銀色のお皿。 そのなかにたっぷり入れられたミルクを指でつついて──ボクの体が宙に浮いた。 「女の子か……。なら、ルイ……なんてのはどうだ?」 男の人が、ボクの鼻に鼻をくっつけて見つめてくる。 というより、ボクって女の子なんだ。 「いやか?」 男の人の顔が寂しそうになる。 ボク、何か悪いことしたかな? でも、名前なんて付けて貰ったことなかったから、嬉しいなぁ。 「尻尾振ってるってことは、いいのかな?」 ギュッと抱き締めてくれた男の人に、ボクは名前を付けて貰った。 ルイ……ボクの名前。
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