誠実or不誠実

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「坂井、ちょっと」 指先をクイクイッと曲げて坂井を呼ぶと、坂井はショーツを持ったまま、私のデスク前にやって来た。 「何すか?」 「何すか、じゃないわよ。 リカさんって呼ぶなっ」 「あぁ。葉山部長でしたっけ」 歳も近いし、まぁいいかと最初は好きに呼ばせていたけれど、水野さんの私に注がれる視線が刺々しい事に気付いたのだ。 だから、せめて会社の中では部長と呼びなさい。と先日、坂井に注意したばかりだった。 水野さんというのは、うちの部の24歳の女の子だ。 坂井が入社した日から、水野さんは猫なで声で坂井に擦り寄っている。 「まぁいいわよ。 次から気をつけて」 丁度、水野さんが席を外しているときで良かったわ、とオフィス内を見回してから思った。
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