第二宵

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アル 「泣いてなどおりません」 ジル 「なら頬を伝ってるのは何?」 主は少し眉をひそめて、私の頬に伝う水を手で拭う アル 「…心の汗です。ある方が女癖が悪かったり片付けしなかったりなかなか起きなかったり食べ物の好き嫌いが激しかったり仕事サボったり仕事を始めたと思ったらふざけだしたりと色々心配事がつきませんので」 ジル 「ご、ごめん…」 主、この場で土下座しようとしないでください。他の方が見ております ジル 「…ごめんね、アル…苦労かけて」 アル 「主が謝る事などありません。私は主に使える護衛なのですから」 最近は比較的平和なのでもはや使用人化してますね。でもやりがいがあって楽しい ジル 「…僕はアルに泣いて欲しいんじゃないんだよ」 アル 「泣いてなどおりません」 もう涙は止まっております ジル 「…我慢して欲しくないんだよ」 アル 「我慢などしておりません」 今もこうしてありのままを話しております ジル 「幸せになって欲しいんだよ」 アル 「私は幸せがでございます」 主に仕えて私は幸せです。これ以上に幸せがあるとは思えません なのに、どうして主は泣きそうな顔をなされているのですか?私は何か変な事を言ってしまったのだろうか…私も泣いてしまいそうだ ジル 「アル、結婚しよう」 突然視界が真っ黒になり、私の思考は一瞬で真っ白になる。感じる暖かさに、数秒して私は完全に主の胸に埋れているのだと気づいた。離れなければ、と思うのに体は動こうとしなかった …力強くなられましたね、主 静寂な世界に2人きりのように感じる。…心臓がうるさい ジル 「…愛してる」 スローモーションのように近づいてくる主の端麗な顔 もし今度あったら足を踏んづけてしまおうと決意していたのに、いざという時に無駄だと知らされる こうして二度目のキスをくらった私の意識はまたブラックアウトした
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