第三宵

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ジェシカ 「アルさんはどうして、ジル兄様を愛称で呼ばれないの?」 アル 「?…たまに呼んでいるぞ」 ジェシカ 「嘘。いつも主ですわ。たまーにジュディア様とおっしゃってはいますけど、愛称で呼ばれているとこは見ませんわ」 アル 「お二人の時ないとお呼びしないから」 ジェシカ 「ジル兄様からそれについて相談されるのに?」 妹になんという相談をなされているのですか、主 なんとなくだが主がジェシカ様にソロッと相談している様子が想像できてしまって、思わず苦笑いになってしまった ジェシカ 「……あの事を気にしてらっしゃいますの?」 アル 「…」 ジェシカ様がいうあの事とはあの日起こった事だろう 暖かな日差し、清掃の行き届いた部屋に散る血痕、飛び交う怒号、悲痛の悲鳴、物のこげる臭い、鳴り止まない肉を斬る音、幼子の泣き声、弱くなる呼吸 あぁ、忘れられないこの記憶 ジェシカ 「その日からですわ。アルさんがジル兄様を愛称で呼ばれなくなったのは」 ジェシカ様の声が段々小さくなっていく。おそらくジェシカ様も同じものを思い出しているのだろう あの時二足歩行もままならなかったあの子供が、今では1人の美しい女性。時の流れははやい ジェシカ 「あれはアルさんのせ「ジェシカ様、本屋に着きましたよ」ぇ、ぁ……降りましょう」 少し気を落としているジェシカ様に微笑みながら手を差し伸べると「ありがとう。で、アルさん…敬語禁止」と柔らかに注意をされた あのあどけなかった子供が今では……時の流れは恐ろしい
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