第一宵

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「…いつも本番なんだけどなぁ」 残念そうに眉を下げる主。若干芝居がかってるのは主の悪い癖だ アル 「ご冗談も程々に。ジュディア様のその言葉に何人の女性が虜になったのやら…」 ジル 「彼女達が勝手に虜になったんだよ。あと、僕のことはいい加減ジルと呼んで欲しいな」 主は美しい。ウェーブのかかった艶のある金髪に全てを見通すかのように澄んだ碧眼、どこか儚げな容姿。貴族の中の貴族といえるでしょう。そして三大貴族の次期当主。そんな主に言い寄られて虜にならぬ女性がこの世にいるだろうか? アル 「女性は誰でも主の虜になりますよ」 ジル 「なら君もなってよ、アル」 アル 「私は護衛です。女性ではありません」 代々続く我が護衛一族。その使命は主…ジュディア様の一族・アレイトス家を守る事。護衛に女性も男性もない。主を守れればそれでいい ジル 「じゃあ僕は女性じゃない人を好きになったってことかい?」 アル 「そうなりますね。本当に好きになっていれば」 ジル 「…本当にそうなのにな」 アル 「その台詞、よく女性に言っておりますよ?」 ジル 「嫉妬かい?」 アル 「違います。何故そうなったのですか」 そして何故ちょっと嬉しそうなのですか ジル 「…アルは可愛いね」 アル 「?ありがとうございます」 ジル 「…その顔が可愛いんだ。他の顔もみたいな…仏頂面以外」 私の頬に手を添えて困ったように小さく笑う主。夕日が後ろから主を照らして…これならどんな難攻不落な女性でも恋に落ちるでしょう。落ちなかったらある意味すごいと思う アル 「善良します。…そろそろ当主様がご公務からお帰りになるお時間ですが、いかがなさいますか?」 ジル 「…確か父上の護衛は君の父親だよね」 アル 「はい、そうでございますが…?」 ジル 「あぁ、そのキョトンとした顔…たまらないね」 アル 「キョトンとなどしておりません」 ジル 「照れ隠しかい?可愛いなぁ」 …さっきから会話がかみ合っていないのは気のせいだろうか? ジル 「…父上を出迎えにいこうか」 アル 「かしこまりました」
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