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人ごみの中から歩いてくる我が主。一日ぶりの主の顔を見てホッとした途端、昨日の記憶が蘇った
…どんな顔で会えばいいんだ?不意とはいえあんな事を、キスされるなんて…あぁ、どうすれば
「ジュディア様ぁ~!」
「どちらに行かれるのですかぁ?」
「私達とお話しいたしましょうよぉ」
あと2mといったところで数人のご令嬢が主に群がった。普段なら私が遮ったりすると文句を言われ、鬱陶しかったが今回は助かった
ジル
「え、あ、ちょっ…アル!助けて」
アル
「…どうか粗相のないように」
ジル
「アルゥ!?」
腕を組まれズルズルと連れられていく主。引きずられながらも未だに助けを呼ぶ主の目は、助けを求めて潤んでいたが無言で貫いた
ミコト
「…大丈夫なのか?あれ」
アル
「いつもの事でございます」
そう、いつもの事。家柄も容姿も素晴らしい上、女たらしな主に女性が群がるのはいつもの事。…キスもいつもの事なのだ
ミコト
「いや、貴殿のことだ」
アル
「?」
セツ
「…気づいてねぇの?」
何がだ?2人が私の顔を見ているということは、顔になにかついているのだろうか?
ミコト
「何というか…泣きそうな顔をしているぞ?」
セツ
「珍しいな。いつもならすぐに仏頂面に戻ってんのに」
…私はそんな顔していない。さっきから頭痛がするし、そのせいで目が潤んでるのだろう。目頭が熱い。顔を覗き込んでくる2人の顔は心配していて、なんだかおもしろかった。でも笑う気分ではない
ミコト
「もしや、体調が悪いのか?」
セツ
「ぶはっ!!さすが俺の主!大丈夫っすよ。これは病気とかじゃないですから。まぁ、ある意味病気だけど」
ミコト
「どっちなんだ一体」
セツ
「基本大丈夫っすよ」
《よりによって…ついてねぇ…》
ミコト
「?…彼奴の世話は大変だろうが…とにかく、今宵は大人しくしておけ」
彼はそう言うと俯く私の頭をポンポンと撫でた。それがなんだか暖かくて、思わず目から何かが零れ落ちてしまった
ミコト
「ぬ!?セ、セツ!我はなにか気分を害してしまったのだろうか!?」
セツ
「あー…大丈夫っす」
ミコト
「さっきからそれしか言っておらんぞ!?」
あぁ、何故だ。止まらない
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