正しい背中の流し方

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泣きたいような気持ちを覚えて柚子は強く奥歯を噛み締めた。 観念してクルリと証に背を向ける。 証は満足そうにその背中を眺めた。 「服、下ろせよ」 「…………え」 「当たり前だろ、背中流すんだから」 「……………」 「自分で脱げねーなら俺が脱がしてやるけど?」 肩に手を置いて耳元で囁かれ、柚子は強く瞑目した。 「じ、自分で脱げるわよ!」 開き直ってそう叫び、柚子はシャツのボタンを外し始めた。 全てのボタンを外し終わり、スルリとシャツを肩から滑らせる。 腰まで下げたが、袖を抜いて全てを見せる勇気はなかった。 「………これでいいでしょ!」 ぎゅっと拳を握りしめて恥ずかしさに耐える。 証は笑って身を起こした。 「ま、いっか」 そう言うと証はシャワーに手を伸ばした。 「汗でべとべとだな」 熱いシャワーが背中を流れたかと思うと、証の手が柚子の肌に触れた。 ビクッと柚子の体が揺れる。 首から腰へと証の手が柚子の肌を伝い、柚子は強く目を瞑った。 予想以上にその手つきが優しく、それを心地いいと感じてしまったことが妙に悔しかった。 「知ってるか? タオル使うより手で洗うほうが肌にいいんだと」 手で泡立てた石鹸を柚子の背中に伸ばしながら証はそう言った。 柚子は何も答えず、じっと体を固くしている。 当然だが、こんな風に男性に肌に触れられるのは生まれて初めてだ。 証の指がうなじから耳の後ろを這い、柚子の体がピクンと跳ねた。 それに気付いた証が再び同じ場所に指を這わせる。 「…………やっ」 思わず声を出すと、証はクスッと笑った。 「ここ、弱いんだ?」 「ち、ちが……っ」 「ふーん?」 証はシャワーを出して、柚子の体についた泡を流し始めた。 反応するまいと決めているのに、証の指が首元を掠める度に体が小さく揺れてしまう。 「へぇ、お前処女のくせに結構敏感だな」 笑いを含んだ証の声を聞き、柚子は恥ずかしさで気が狂いそうだった。 「処女は関係ないじゃない!」 「だってお前、男知らねーんだろ?」 「そ、それは……」 泡を流し終えた証はキュッと蛇口を捻ってシャワーを止めた。 「でもお前、彼氏いたことあるっつってたよな」 「……………うん」 「その彼氏とは何もしなかったのかよ」 「あ、あんたに関係ないでしょ!」 恥ずかしさをごまかす為に声を荒げると、証はふっと笑みを浮かべた。  
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