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剥き出しの柚子の肩を掴む。
「じゃあ、こんなことされたことある?」
そう言うと、証は柚子のうなじの辺りに唇を押し付けてきた。
「─────── !?」
不意をつかれて柚子は大きく身をよじった。
「ちょ、何す、やめ…っ」
振り返って逃れようとしたが、証の手にがっちりと肩を掴まれ動くことができない。
証は何度も柚子の首に唇を落とす。
ぞくっとして柚子は激しく首を振った。
「ちょっと! 背中の流し方を教えてくれるんでしょ!?」
「何言ってんだよ、これも一連の中に入ってんだよ」
「はあっ!?」
「男はこういうことされて喜ぶの。あと体を使って洗うとか」
「なっ……そんなの、まんま風俗じゃん!」
「馬鹿言え。こっちは風俗よりもずっと高い金払ってんだ」
そう言うと証は背後から柚子の顎をくいっと持ち上げた。
「もっと楽しませろよ」
柚子はどうすればいいのかわからず、困ったように証の顔を見つめ返した。
「た、楽しませるって……」
上擦る声を聞き、証はニッと笑って再び柚子の肌に口付けた。
「……………やっ」
柚子はきつく目を瞑る。
証はやんわりと柚子の肩を掴み、ただ柚子の背中や首に唇を落とし続けた。
「……………っ」
たまらず柚子は肩越しに証を振り返った。
「証……お願い、もう……」
哀願するように言うと、証はニッと皮肉げに笑った。
くいっと柚子の顎を掴む。
「お願い、何?」
「…………え?」
「『お願いやめて』か? ……それとも……」
そこで証は柚子の耳に顔を近付け、囁くように言った。
「『お願い、これ以上焦らさないで』か?」
カッと柚子の頭に血が昇った。
みるみる怒りが込み上げ、柚子は感情を抑えることができなかった。
気が付くと勢いよく証に向き直り、高く右手を振り上げていた。
だがそれを振り下ろす寸前、パシッと証の手が柚子の手首を掴んだ。
柚子は激しく証を睨み付ける。
こんな屈辱に耐えるのは、もう限界だった。
証の口元からは笑みが消え、代わりに静かな瞳で柚子を見下ろしていた。
「俺を殴るのか」
「……………!」
柚子はハッと我に返る。
奴隷が主人に殴りかかるなど、言語道断だ。
それでも柚子は謝罪を口にすることはできなかった。
口を開けば、涙が零れそうだったからだ。
「こんなことにも耐えらんねーでどーすんだ」
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