プロローグ

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裕福で病弱な少女の話し相手として富裕層の人間に買われたのである。 富裕層へ貧困層の子供が買われるなんて話は青年の村ではよくある話で、青年もその事をなんら疑問にも思っておらず、寧ろこの歳まで良く家に残っていたなと不思議に思う位であった。 偶々買われた先が良かった為、青年は時折家族と顔を合わせる事が許されたりと他の子どもと比べると優遇されていて、お屋敷のお嬢様に生涯お仕えしながら一生を終える物だと思っていたのである。 しかし青年の心とは裏腹に事態は変わってしまった。 お嬢様の勉学に青年が付き添ううちに、お嬢様付きの家庭教師から才能と資質を見いだされ、大旦那様より官吏になる事を薦められた。 青年は断ったのだがやむなく試験を受ける事になりこの始末である。 官吏に成ったら滅多な事では家やお屋敷に帰れないだろう。 兄弟や親の顔が浮かんだ。 俺が居なくなったらどうやって生きていくのだろうか。 そう考えるとどうしても官吏になど成ってやるものかとこうして反抗してしまう。 我ながら子供らしい反抗だと思った。 だがそれも長く続かず遠くから誰かの呼ぶ声がして青年は顔を顰める。
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