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やってきたのは大旦那様だった。
「全くこんな所にいたのか捜したよ帝君。」
「大旦那様、自分は官吏になど成りたくありません。
ほっといて貰えませんか。」
「それは出来ない約束だな…」
大旦那様が酷く困った顔をしたので青年帝はため息を付き視線を逸らした。
受かってしまったからには仙として働かねばならない。
神々の力を循環させる為に神気を使わねばならないからだ。
「君は紛れもなく神の子だ。
まだ位は分からないがかなり高位の存在の力を魂の内に秘めている。」
「そんな筈はありません!」
神気のある者は神との間に生まれた子供である。
帝の親は育ての親ではないと発覚したのだ。
神の力があると認めてしまったら育ての親との関係が完全に失われてしまう。
それが酷く怖かった。
両親が何故あんなにも頑なに身を売る事を反対したのかと考えもしたが、両親を疑いたくなかったからその考えを打ち消す。
「俺には神の血など流れていないです。」
「だが両親がただの人間だと一番知っているのは君だろう。
ならば尚更本当の両親を捜す為ますます官吏にならなければ、故郷が心配と言うならば私を通じて仕送りをすれば良い。」
そうまで言われてしまえばこれまでである。
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