婚約者、襲来!

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若干5才にして柚子のことを一代成金の娘と評し、鼻で笑って見下していたことは忘れたくても忘れられない。 (うわー。言われてみれば1ミリも変わってないじゃない。あの、人を見下した態度といい、自分中心で強引なとこといい……) 言葉を失って青い顔をしている柚子を見て、証はフッと笑った。 「思い出したみてーだな」 「あ……あんな強烈な奴、忘れる訳ないじゃない……」 柚子はハーッと大きく息をついた。 しかし、ふと我に返る。 「…………でも、私の記憶ではあの子ってあんたのこと筆頭になって虐めてなかったっけ」 「ああ。幼稚園の頃はな」 証はそこでハンドルから手を離し、腕を組んでシートにもたれた。 「小学校に上がってからは泣き虫も治ったからな。まぁ元々俺って家柄はいいし顔も頭もいいし、運動できるし? 高学年になる頃にはあの女も掌返して俺に媚びるようになってたな」 「………………」 例えそれが真実だとしても、ここまで自画自賛する人間も珍しい。 謙遜なんて言葉はきっと見たことも聞いたこともないのだろう。 (………お似合いよ、あんた達) 柚子はひきつった笑いを浮かべ、心の中でふっと息をついた。 だが先ほど証の言ったことを思い出し、柚子は首を傾げた。 「でも婚約者じゃないって……なんで二人の言うこと食い違ってる訳?」 「…………………」 すると証は今までで一番大きな溜息をついた。 眉間には深い皺が刻まれている。 「元々、俺の親父とあいつの親父って同級生なんだけどさ。秋の園遊会で久しぶりに会ったらしいんだよ」 「…………え、園遊会……!?」 柚子は驚いて証に体ごと向き直った。 「園遊会って、オリンピックでメダル取った人が天皇陛下にお呼ばれする、あれでしょ!?」 「…………お前の知識はワイドショー寄りで浅ぇな。園遊会ってのは総理大臣をはじめ、各界の著名人が招待されるんだ。………てか、今は園遊会の話はどーでもいいんだよ」 「………………」 (どうでもいいって……。庶民にとっては雲の上の話なんだけど) 天皇陛下や総理大臣がいる場所に列席することを、まるで御飯でも食べることのようにさらっと話をするところが凄い。 まるっきり生きてきた土壌が違う。 毒気を抜かれて呆然としている柚子をよそに、証は淡々と話を進めた。  
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