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「すまない。ただ静かに食事をしたかっただけなのに、無粋(ぶすい)なことをしてしまった」  脇腹を押さえたユキヒコをふたりがかりで両脇から支え、カザンたちが大食堂をでていった。安堵(あんど)の空気が流れ、食器の音がもどってくる。  カツカツとブーツが床を打つ音が響き、タツオの前で止まった。 「サカシマ・タツオ、話がある。昼休みに射撃訓練場の裏で待ってるわ」  相変わらずわがままな姫君だった。サイコはカザンよりも、タツオよりも優秀だった。確か入学時の席次は7番。カザンはタツオよりわずかに落ちる33番だ。 「ちょっと待ってくれ。こちらに用事はないよ」  没落したうえに、近衛家でもなくなった自分になんの用があるのだろう。タツオは昔を思いださせるものが、みな嫌いだ。 「いいから、きなさい。わたしが大切な話があるというときは、ほんとに大切なのよ。ちいさな頃から、それくらいわかってるでしょう。あのバカ兄貴と違って、タツオは頭いいんだから。じゃあ、待ってるから」
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