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「ちょっと…由紀子!」
私の呼びかけに、ゆっくりと由紀子が振り返る。
「ねぇ…麻里子…。あなたの20年は幸せだった?」
私とは視線を合せないまま、寂しそうに呟く由紀子。
「えっ?」
「私は…とても辛かったわ。
だって本当に好きな人には結局振り向いてもらえない20年だったんだもの」
和人の服を抱えたまま、由紀子は悲しそうに瞳を揺らした。
「由紀子の好きな人って…」
「私ね、ずっと和人さんが好きだったわ。
麻里子が和人さんを私に紹介してくれた時からずっと。
だけどね、和人さんは麻里子しか見てなかったから…。
たとえ子供が産めなくても、麻里子じゃないとダメなんだって」
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