752人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
しばらくその場で涙を零していた由紀子が、再び歩き始める。
慌ててその後を着いて行くと彼女が入って行ったのは…
…メモリアルホールだった。
入口に立てかけられた大きな看板に書かれた私の名前。
『佐々木麻里子 葬儀会』
その看板を見つめながら、本当に自分が死んだという事を改めて思い知らされた気がした。
ゆっくりとその会場内へと足を進めて行くと、祭壇の前にうなだれる
和人の背中が見える。
それを励ますように寄り添う、和人の両親と…
和人の会社の同僚、工藤さんの姿。
これは悪い夢なのではないかと、必死に頬を叩いてみるけれど、全く痛みを感じない。
まるで雲を触っているかのような自分の頬。
そう…手のひらには何の感触もなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう！