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子供がいない私たちは二人だけでのんびりと暮らしているけれど、愛を囁き合う事もすっかりなくなった。 今朝だって和人が私を求めたのは、久しぶりに目覚めと共に起きた男の性ついででしかない。 結婚したばかりの頃は、たくさんの言葉をくれた和人だったのに。 出来上がった朝食を黙々と口に運んだ和人は、つけっぱなしだったテレビから流れた目覚まし時計のアナウンスを号令にスーツを羽織った。 いつも通りの朝の風景。 何も変化のない毎日。 「じゃあ仕事終わったら電話するから、いつでも出れるように支度だけしておいて」 もう一度私に念を押して、和人は玄関の扉を開けて出勤して行った。
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