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大きくため息を吐き出して、私はまるで機械のように脱衣所にある洗濯機に洗濯物を放り込むと、そのままキッチンで朝食の後片付けを済ませる。 いつもならここで夕食のメニューに使う食材を、冷凍庫から取り出し冷蔵庫へと移動させるのだけれど、今夜は外食だからそれは必要ない。 片付けが終わった頃には、全自動の洗濯機が作業を終えた合図を知らせる。 湿気が溜まりやすい団地の作りだけに、バスルームの窓を全開に開けてから洗濯物を取り出して、ベランダで干す。 それが終われば、リビングと寝室に掃除機をかける。 まるで家政婦みたいだ。 けれどそれが私の与えられた仕事であるのは違いない。 働かずして和人が稼いでくれたお金を任せて貰えるのだから、贅沢も言えないのだ。 そんな私の唯一の娯楽は、ベランダで育てている花たちだった。
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