1930人が本棚に入れています
本棚に追加
「気持ちの問題だと思うなぁ。……せっかく普通の人より星に近い場所に住んでるのに、願い事だって叶いやすいかもしれないよ?」
「…………………」
証はしばらく柚子の顔を見つめていたが、やがてふっと笑って立ち上がった。
「………お前、むいてるんじゃね? 保育所の先生」
「…………え?」
「発想が幼児並」
「………………っ」
せっかく褒められたのかと思ったのに結局バカにされたようで、柚子はムッとして立ち上がった。
「…………どうせ精神年齢低いですよ!」
柚子がプイッとそっぽを向いたその瞬間、ふわりとなびいた長い髪から甘い香りが漂ってきて証の鼻をついた。
証はスッと笑いを収める。
「先にご飯でいいのよね?」
怒ったような口調で証の脇を摺り抜けようとした柚子の手首を、証はぐっと掴んだ。
柚子は弾みで勢いよく振り返る。
「…………な、何?」
証は探るように柚子の目を見据え、その眼光の鋭さに柚子はわずかに鼻白んだ。
「………お前、今日どこか出掛けたのか」
「…………え」
柚子は不安げに証を見上げた。
「し、下のスーパーに買い物に行ったけど……」
「─────他は?」
「え、べ、別に、どこも……」
柚子の心臓がきゅうっと痛みだす。
証はしばらく睨むように柚子の目を見つめていたが、やがて小さく口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!