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柚子が何かを考え込むように黙り込んだのを見て、証はキッとまなじりを吊り上げた。
「………あいつに何かされたんじゃねーだろーな」
「な、何にもされてないよ!」
柚子は勢いよく首を振る。
「あいつと同じ車に乗って、何もねー訳ねーだろーが!」
「ホントに何もないよ!……ただ、髪を触られただけで……」
「…………………」
証の顔色がみるみる怒りで強張っていった。
柚子は言葉を失ってただ証の顔を見つめ返す。
「………あいつに、髪を触られた……?」
「触られたって言ってもちょっとだけだよ。一房手に持たれただけで……」
証は込み上げてくる怒りを抑えることができなかった。
サッと辺りを一瞥したその時、テーブルの上に先程まで柚子が使っていたハサミが視界に入った。
ゆっくりとそれを手に取る。
だがそれを見た柚子はぎょっとして後ずさった。
「…………あ……証……?」
証は鋭い瞳のまま、柚子にゆっくりと近付いた。
恐怖で柚子は証から逃げようと足を後ろへ動かしたが、すぐに背中が壁際についてしまった。
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