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壁際まで柚子を追い詰めた証はバン!と勢いよく柚子の顔の横に手をついた。
柚子はビクッと体を震わせる。
直後目を開け、恐る恐る証の顔を見上げた。
「…………あ、証………」
証はすぐにその手で柚子の髪を握り、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。
痛みで柚子は顔をしかめる。
「………言ったよな? お前の全ては俺のもんだって」
「…………………」
「他のヤローに触られたものなんか、いらねーんだよ」
次の瞬間、証はハサミの刃を柚子の髪に突き立てた。
柚子は信じられない思いでそれを見つめる。
「………や、やだ……証……」
「………………」
「ごめんなさい! もう二度と軽はずみなことしないから…!」
柚子が全てを叫び終わる前に、証は手に力を込めていた。
ジョキ……という髪を切り刻む音が柚子の耳に飛び込んできた。
それと同時にハラハラと短くなった髪が、柚子の頬に戻って触れた。
「…………あ………」
柚子は証の手に握られている髪の束を呆然と見つめる。
それでもすぐには信じられなくて、ノロノロと切られた髪に手を置いた。
だが無情にも、そこにはザクザクに切られた短い髪があるだけだった。
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