星に願いを

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「お客様、一本どうですか」 買い物を終え、自動ドアをくぐろうとした柚子に不意に店員が声をかけてきた。 柚子は足を止める。 店員は木の枝のようなものを手にしていた。 「何ですか?」 「笹の葉です」 言われて柚子はあっと思い当たった。 (あ、そっか……。明日って七夕かぁ……) 「今日と明日とでお配りしてるんです。よろしかったらどうぞ」 「……じゃあ、一本ください」 考えた末、柚子は笹の葉を一本貰うことにした。 (………余計なもの貰うなって怒られるかな) これだから貧乏人は無料だと何でも貰ってきやがって、と厭味を言う証の顔が目に浮かぶようである。 (ま、いいや。こういう季節の行事って大事にしないとね。……えっと確か実習で使った折り紙が残ってたはずだから、それで飾り作って……) あれこれ考えながらスーパーを出た柚子は、不意に誰かに強く手首を掴まれた。 驚いて柚子は足を止め振り返る。 「…………………!」 手首を掴んでいる人物を目にした柚子は思わず息を飲んだ。 「久しぶり、柚子ちゃん」 そう言ってにっこり笑ったのは、あのパーティーの日に強烈な印象を残して去っていった是枝 秋だった。 柚子は混乱してただ是枝の顔を見つめる。  
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