星に願いを

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………何故、是枝がこんなところにいるのだろうか。 「あ、あの……」 掴まれた腕に抗うように力を入れると、是枝はぐいっとその腕を引いた。 「ちょっとだけ、いいかな」 「………は? 何がですか?」 「話があるんだ。成瀬のことで」 「…………え」 証のことと言われ、柚子はわずかに逡巡した。 迷っている間にも是枝はぐいぐいと柚子の手を引き、マンションの外へ出てしまった。 そうしてマンション近くに停車していた車に押し込めるように柚子を助手席に乗せた。 是枝が運転席に乗り込んだ瞬間、甘ったるい匂いが柚子の鼻をついた。 この男がつけている香水だろうか、あのパーティーの夜も微かに香っていたが、こんな風に個室に入ると更に際立つ。 その香りを嗅いだ瞬間、柚子はハッと我に返った。 ………何故、こんな男の車に乗ってしまったんだろう。
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