星に願いを

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夕飯の支度を終えた柚子は、証の帰りを待つ間リビングのテーブルで七夕の飾りを作り始めた。 折り紙にハサミを入れながら、何度か手が止まる。 是枝の言葉で、ひどく気になることがあった。 『罪滅ぼし』 確かに是枝はそう言った。 自分が証を虐めていたので、柚子が証に……というならまだわかる。 しかし証が自分に罪滅ぼしとは一体どういうことなのだろう。 ぼんやりと考えに耽っていると、ガチャリと玄関のドアが開く音が聞こえた。 柚子はハッと我に返る。 慌ててテーブルの上を片付け始めた。 リビングに入ってきた証は、テーブルの上に広げられた折り紙を見て眉を寄せた。 「お、お帰り」 「………何やってんだ?」 「あ、えっと…買い物行った時に笹の葉くれてね。ほら、明日って七夕じゃない。せっかくだから飾り付けしようと思って」 「……………へぇ」 証は興味深げにテーブルの脇に屈み込んだ。 柚子が作った飾りを一つ手に取る。 「ふーん、さすがに上手いもんだな」 「え?」 「保育士になったらこういうの作るんだろ?」 「………………」 柚子は驚いて証の顔を見つめた。 (………覚えてたんだ……) にわかに嬉しさが込み上げ、柚子は端に置いてあった短冊に手を伸ばした。 「証も書かない?」 「………は?」 「願い事」 すると証はバカにしたように目を細めた。 「くっだらねぇ。そんなもんに願い事書いて叶うぐらいなら誰も苦労しねーよ」 「…………そりゃそうだけど」 冷めた口調にがっかりして、柚子は口を尖らせた。  
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