21発の花火

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家のドアを開けると同時に、リビングに明かりが付いていることに証は気が付いた。 次の瞬間、奥からトタトタと軽快な足音が聞こえ、柚子がはちきれそうな笑顔で証を出迎えた。 「証……! お帰りなさい!」 いつになく嬉しそうな柚子の様子に、証は軽く混乱した。   「よかったぁ。もう今日中には帰ってこないと思った」 「……………何が」 「いいから早く来て。日付変わっちゃう」 証が靴を脱ぐやいなや、柚子は証の腕を掴んでぐいぐいと部屋の中へ引っ張っていった。 「おい、何だよ!」 柚子に腕を引かれながらダイニングに足を踏み入れた証は、テーブルの上を視界に入れてゆるゆると目を見張った。 そこには綺麗にデコレーションされたケーキが乗っていた。 チョコレートにはHAPPY BIRTHDAYと書かれ、大きなロウソクが2本と、小さなロウソクが1本立っている。 「誕生日おめでとう、証」 一瞬ぼんやりと惚けていた証は、柚子の声にハッと我に返った。 ゆっくりと柚子の顔を見下ろす。 「………お前、知ってたのか」 「いや、実はギリギリまで知らなかったんだけど……」 柚子は決まり悪げに舌を出した。  
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