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「今日ね、小春が証に誕生日プレゼント持ってきたの。それで初めて知ったんだけど」
「………小春が?」
「うん、それ」
柚子はリビングのテーブルに乗せている紙袋を指し示したが、証はチラッとそれを一瞥しただけですぐに柚子に向き直った。
「………電話した時、これってもう作ってたのか」
「え、あ、うん。ちょうど出来上がったぐらいで電話かかってきて……」
証はぎゅっと拳を握りしめる。
「この、バカッ!!」
いきなりそう一喝されて、柚子はビクッと証を見上げた。
………喜ぶとは思わなかったが、まさか怒られるとは。
「もう用意してたのかって聞いたら、お前まだしてねーって言ってただろーが!」
「え、だ、だって本当にケーキしか作ってなかったんだもん」
オロオロと柚子は証を見上げる。
「それに、お父さんと食事に行くなら、多分誕生日を一緒に祝うんだろうなって思って……」
「………………」
「私なんかが作るご飯で庶民ぽい誕生日祝いするより、家族と一流ホテルで祝うほうがよっぽど自然だし……」
柚子が言い終わったその時、ドサッと証の持っていた鞄が床に落ちた。
驚いた次の瞬間には、柚子は証に強く抱きしめられていた。
柚子はとっさに息を止める。
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