21発の花火

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「…………あ、証……?」 「バカ、なんで言わねーんだよ。こんなの作ってるって知ってたら帰ってきたのに」 「……………え?」 柚子は驚いて身をよじった。 「な、何言ってんの、証」 「親父と誕生日祝いなんかしてねーよ。……そもそも覚えてもなかったし」 「え、そうなの?」 「ああ。だからいつでもよかったんだ、あんなの」 柚子を抱きしめながら、自分がひどく感傷的になっていることに証は気が付いた。 いつもなら、これぐらいのことで箍が外れて抱きしめたりなんかしないのに。 きっと先程父と交わした会話のせいだ。 「あ、証……」 柚子は面食らったように証の腕の中で身じろぎした。 「じゃあさ、ちゃんと今日中にお祝いしよ? あと20分で誕生日終わっちゃうよ?」 「…………ああ、そうだな」 証はそっと柚子の体を引き離す。 柚子は証に微笑みかけた。   「それより証、こんな時間にケーキなんか食べられる?」 「俺の甘党ナメんじゃねーぞ。お前こそまた太るんじゃねぇのか」 「……うっ。い、一日ぐらい大丈夫だもん」 柚子はむくれてキッチンに足を向けた。 この一月であらゆる努力をしてなんとか元の体重に戻したばかりである。 (ただでさえ貧乳で散々いじられてるのに、これ以上いじられるネタ作りたくないもんね) 本来ならこんな時間にケーキなんて言語道断だが、今日は証の誕生日だから特別だ。  
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