21発の花火

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「……んー。恨んでは……ないかな」 「………え?」 「誤解されがちなんだけど、お母さん家を出て行く時、私のことも一緒に連れて行こうとしたの」 「………………」 証は驚いたように瞠目した。 初めて聞く話だった。 「でも違う父親ができるってことがピンとこなくて、子供心に私がいなくなったらお父さんが一人ぼっちになっちゃうって思って……だからついて行かなかった」 「……………」 「自分で決めたことだから恨んだりなんかできないよ。……今更会いたいとも思わないけど」 柚子は困ったような笑顔を浮かべた。 証も何と答えていいかわからず、黙ってグラスに口を付けた。 「…………お前の誕生日……」 「………え?」 しばらくの沈黙の後、証が不意に口を開いたので柚子は顔を上げて証の顔を見つめた。 「お返しにお前の誕生日、派手に祝ってやるよ。年の数だけ、東京湾に花火でも打ち上げてやる」 「あはは、すごい」 柚子は思わず笑ったが、すぐに寂しそうな表情を浮かべた。 「………嬉しいけど、私の誕生日、来年の3月なんだ」 「……………」 「契約……終わってる」 証はゆっくりと目を見張った。  
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