21発の花火

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柚子との契約は来年の2月で終わる。 元々ひょんなことから始まった同居生活だった。 いつまでもこの生活が続くなんて思っていた訳ではない。 けれど、いつしか傍にいるのが当たり前になってしまっていた。 家に帰ると笑顔で出迎えてくれ、柚子の作った料理を食べるのが当たり前になっていた。 ………しかしそれには、期限がある。 そして自分達には確かな繋がりなど何もない。 金で柚子の10ヶ月を買った。 ただ、それだけなのだ。 とっさに証は、契約後でも会えばいいと口にしかけた。 その瞬間、父の言葉がまざまざと脳裏に蘇った。 柚子の顔を見つめ、証は口を噤む。 会ってはいけない。 一度会ってしまうと、きっと何かと理由をつけて会おうとしてしまう。 ………そうなれば、未練が残るだけだ。 証は膝の上で強く拳を握りしめる。 そうして伏し目がちに、小さく笑った。 「……そうか。……残念だな」 「………………!」 柚子は弾かれたように顔を上げた。 直後襲ったチクリとした胸の痛みに、柚子は軽く唇を噛み締めた。 (………変なの。何がっかりしてんだろ、私……) 心のどこかで、契約が終わっても会って誕生日祝いをしようと言ってくれるのではないかと……そう思っていた。 だが今の言葉で、契約後まで柚子と付き合っていくつもりが証にはないことがよくわかった。 「…………ホント、残念」 寂しさを悟られないように、柚子は明るく笑ってみせた。 それに応えるように証も小さく笑う。 それぞれの思いを胸に秘めながら、二人は黙々とケーキを口に運んでいた。  
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