21発の花火

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「もしかしてエアコン強すぎるのか?」 「……………」 柚子はためらいがちに頷いた。 とっさに証は柚子の手を取る。 まるで水仕事をした直後のような冷えた指先に、証はハッとした。 「…………この、バカッ!!」 柚子はひゃっと目を閉じる。 今日はバカと言って怒鳴られてばかりだ。   証は枕元のリモコンを手に取りすぐに設定温度を上げた。 そうして再びキッと柚子に向き直った。 「なんで言わねーんだよっ! もしかしてずっと我慢してたのか!?」 「………だって」 柚子は困ったように証の顔を見上げた。 「言えないよ、そんなの……」 「………………」 証は小さく吐息し、覆いかぶさるようにして柚子の顔を見下ろした。 そっと柚子の頬に触れる。 「………お前は、俺に何にも言わねーんだな……」 「………………」 「そんなに俺が怖いか?」 柚子はしばらく黙り込み、やがてコクリと頷いた。 「怒ったら、怖い……」 「……………」 証はふっと自嘲気味に笑う。 激怒の末に髪を切ってしまった前科があるだけに、返す言葉もない。 「言えばよかったんだよ。また風邪ひいたらどうすんだ」 「………ん、そうだね」 柚子は笑って頬に置かれている証の手を握り返した。  
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