21発の花火

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考える暇もなく、柚子は証に唇を塞がれていた。 驚いた柚子は証の体を押し返す。 証はすぐに唇を離し、身を起こして柚子を見下ろした。 「……………駄目か?」 証の瞳が熱く揺らめくのを見て、柚子は返答に窮してしまった。 あまりにも突然すぎて、心の準備ができていない。 抱くぞと言われても、すぐに「はい、どうぞ」と返事はできない。 (だ、抱くって、急になんで…? 寒いって言っただけで、なんでスイッチ入っちゃうの?) 処女のまま棺桶に入らないように祈っててやると言われてから、証は柚子に手を出す気はないのだと思い込んでいた。 それだけに、どうしていいかわからない。 「あ……あの……」 自分でも驚くほど声が震えていた。 証はじっと柚子を見下ろしている。 押さえ込まれた手首から、証の本気が伝わってきた。 柚子が何も答えないので、証は片手を柚子のパジャマのボタンにかけた。 ゆっくりと一つずつ、上からボタンが外されていく。 肌に証の手が触れ、ビクッと柚子は体を震わせた。 ボタンを全て外し終えたその手が、おもむろに下半身へと滑ってきた次の瞬間。 どうしようもない恐怖が柚子の胸に込み上げてきた。 「………………!」 証はハッと目を見張る。 柚子の目にじわりと涙が浮かんだからだ。 「………た……橘……」 証が柚子の体から離れたのを機に、柚子の緊張が一気に緩んでしまった。 「………ふ………」 その途端、堰を切ったように柚子の目から涙が溢れ出した。  
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