2810人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
考える暇もなく、柚子は証に唇を塞がれていた。
驚いた柚子は証の体を押し返す。
証はすぐに唇を離し、身を起こして柚子を見下ろした。
「……………駄目か?」
証の瞳が熱く揺らめくのを見て、柚子は返答に窮してしまった。
あまりにも突然すぎて、心の準備ができていない。
抱くぞと言われても、すぐに「はい、どうぞ」と返事はできない。
(だ、抱くって、急になんで…? 寒いって言っただけで、なんでスイッチ入っちゃうの?)
処女のまま棺桶に入らないように祈っててやると言われてから、証は柚子に手を出す気はないのだと思い込んでいた。
それだけに、どうしていいかわからない。
「あ……あの……」
自分でも驚くほど声が震えていた。
証はじっと柚子を見下ろしている。
押さえ込まれた手首から、証の本気が伝わってきた。
柚子が何も答えないので、証は片手を柚子のパジャマのボタンにかけた。
ゆっくりと一つずつ、上からボタンが外されていく。
肌に証の手が触れ、ビクッと柚子は体を震わせた。
ボタンを全て外し終えたその手が、おもむろに下半身へと滑ってきた次の瞬間。
どうしようもない恐怖が柚子の胸に込み上げてきた。
「………………!」
証はハッと目を見張る。
柚子の目にじわりと涙が浮かんだからだ。
「………た……橘……」
証が柚子の体から離れたのを機に、柚子の緊張が一気に緩んでしまった。
「………ふ………」
その途端、堰を切ったように柚子の目から涙が溢れ出した。
最初のコメントを投稿しよう!