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何故こんなに涙が溢れてくるのか柚子自身にもわからなかった。
ただ止めようとすればするほど止まらない。
「………う………うっ」
なんとか涙を止めようとして、柚子は両手で目元を覆った。
「……………橘」
困ったような証の声に、柚子は首を横に振った。
「………ごめん。……大丈夫」
しゃくり上げる柚子を見て、証は力なくベッドに座り込んだ。
持て余して前髪を掻き上げ、強く唇を噛み締める。
柚子の啜り泣く声を耳にしながら、昂揚していた気持ちがスーッと冷めていくのを感じていた。
そうして、柚子が泣き止むのをその横でただ黙って待っていることしかできなかった。
しばらくしてようやく涙が止まった柚子は、胸元をかきあわせながらノロノロと起き上がった。
「…………………」
二人は黙って向かい合う。
証が柚子に声をかけようとした時、柚子が先に口を開いた。
「…………証。一つだけ、聞いていい?」
「………………」
証は無言で柚子を見つめ返す。
柚子は頬に残った涙を拭ってから、ためらいがちにこう言った。
「私を抱くって言ったのは……性欲を満たす為……?」
「………………!」
証は驚いて柚子の顔を凝視した。
とっさに何も言うことができずに黙り込む。
証が何も答えないので、柚子は少し悲しげにその顔を曇らせた。
「だったら……だったら、他のやり方で、してあげるよ……」
「………………?」
戸惑う証の前で、不意に柚子が身動きした。
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