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柚子はモニターの小春を凝視する。
(証の……誕生日……?)
思いがけないことを言われて、柚子は軽く動揺した。
「せめてこれを証様に渡していただけませんか」
「………………」
一拍の逡巡の後、柚子は仕方なく玄関へ向かった。
ドアを開けると、小春はホッとしたように柚子を見つめた。
「携帯に電話しても出てくれず、会社に行っても取り次いでもらえなくて辟易していたんですの」
「……………はぁ」
柚子はぼんやりとした返事を返した。
「あの……証って……」
「はい?」
「あ、いや、証様って……今日が誕生日なんですか?」
「ええ、そうですわ」
そこで小春は小さな紙袋を柚子に差し出した。
「これ、プレゼントです。どうか証様にお渡しください」
小春の態度は以前とは違うものだった。
以前はどこか柚子を見下したような態度だったが、今日はどことなく腰が低い。
柚子を家から勝手に追い出したことで、余程強く証に怒られたのだろう。
(証、怒ったら怖いもんなぁー)
しかもあれから完全に連絡を絶たれているらしい。
先程までの怒りが一転して、柚子は小春に同情のような気持ちを覚えた。
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