21発の花火

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柚子はモニターの小春を凝視する。 (証の……誕生日……?) 思いがけないことを言われて、柚子は軽く動揺した。 「せめてこれを証様に渡していただけませんか」 「………………」 一拍の逡巡の後、柚子は仕方なく玄関へ向かった。 ドアを開けると、小春はホッとしたように柚子を見つめた。 「携帯に電話しても出てくれず、会社に行っても取り次いでもらえなくて辟易していたんですの」 「……………はぁ」 柚子はぼんやりとした返事を返した。   「あの……証って……」 「はい?」 「あ、いや、証様って……今日が誕生日なんですか?」 「ええ、そうですわ」 そこで小春は小さな紙袋を柚子に差し出した。 「これ、プレゼントです。どうか証様にお渡しください」 小春の態度は以前とは違うものだった。 以前はどこか柚子を見下したような態度だったが、今日はどことなく腰が低い。 柚子を家から勝手に追い出したことで、余程強く証に怒られたのだろう。 (証、怒ったら怖いもんなぁー) しかもあれから完全に連絡を絶たれているらしい。 先程までの怒りが一転して、柚子は小春に同情のような気持ちを覚えた。  
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