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「君の言う通り、殺すつもりなんてなかった。だから、あの男を痛めつける時にはちゃんとマスクを被った。
目を覚ました男が最初に何て言ったと思う? 『芽衣をどうした』だってさ。自分が囚われて危険な状況だっていうのにね」
政やん――。
その状況でもあたしのことを――。
「組の2人の手を借りてたっぷりと傷めつけてやった。でも死なれて大ごとになっても困るからね。どこかで解放する為に、目隠しの袋を被せようとしたんだ。色々と見られて復讐されたら困るから」
竹内が、おもむろに右手の包帯を見せて言った。
「あの男は僕の温情を踏みにじって何をしたと思う? この右腕を噛み千切ったんだ。それで僕はキレちゃったのさ。
せっかく閉じ込めていた兄さんの仇が心から飛び出した。辛かった子供の頃を思い出したよ。君に想像できる? 両親を失い、その代わりに僕らを育ててくれていた優しい兄さんまでも失った小学生の気持ち」
竹内が言葉を切って身じろいだ。
生田目も落ち着かない様子を見せ始めた。
なんだろう。
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