物語 - 6章 - の続き

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 ヒロちゃんや遠藤さんの言った、何かに感づいた美穂子さんが阿久沢組に探りを入れて捕まったという推測と、純也の言った22年前の恨みではないのかという推測は、どちらも当たっていたということだ。   「結局あの男は、誰だか分からない相手に痛めつけられて、永遠に口をつぐむことになったんだ。  死体を海に捨ててしまったこと。これが僕にとって第一の誤算だった。予定外のことだったからね。慌ててしまったんだ。今思えば山に埋めるべきだったかな」  政やんは最後まであたしを心配し、そして最後まで抵抗して殺されたのだった。  今までそれを知る為にあたしは必死にやってきた。  その結果、勘違いから亜沙美を深く傷つけ、美穂子さんをもこんな風にさせてしまった。  それなのに、こうもあっさりとその死を語る竹内に対し、激しい憎悪を抱いた。  殺してやりたい。  殺しても良心の呵責は感じない。  こいつらを殺すことで心に痛みなど感じるはずがない。  でも、あたしが人殺しをしたら、美穂子さんもヒロちゃんも悲しむ。  だから出来ない。  純也にもそうさせてはならない。  警察か。  榊組か。  あたしはどっちに連絡すべきか。
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