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「社長。是枝様というかたが面会を希望されてますが」
受付からの内線を取った五十嵐が証にそう告げた。
自身のデスクで書類に目を通していた証は聞き間違いかと思い、五十嵐を見つめたまま眉を寄せた。
「…………誰だって?」
「是枝様です。……お通ししますか?」
「………………」
証は頭痛を覚え、強く額を押さえた。
続いて、これ以上はないという渋面を作る。
それを見た五十嵐は不穏な空気を感じ取った。
「………お断りしましょうか」
「─────いや」
証は立ち上がり、スーツの上着に手を伸ばした。
「そっちに下りるって言ってくれ」
短くそう言うと、証は乱暴な足取りでドアへと向かった。
一階へ下りると、是枝が満面の笑みで受付嬢に話し掛けていた。
証の姿に気付いた受付嬢が、困ったような顔で立ち上がる。
深く腰を折る受付嬢を軽く手で制し、証は是枝の元まで歩を進めた。
「うわー、エラソー」
是枝は揶揄するようにクスクス笑う。
証は最高潮に苛ついたが、社員の手前もあり無理に笑顔を作った。
「外で話そうか」
「えー、社長室とか通してくんねーの?」
「……………外で話そうか」
笑顔を引き攣らせて語気鋭く言い放つと、是枝はつまらなさそうに肩をすくめた。
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