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「やっとヨツバとの契約、決まりましたね」
道路脇でタクシーを待ちながら、五十嵐は横に立つ証に笑いかけた。
11月の夜の風は冷たいが、程よく酔っているせいか、契約が決まって気分がいいせいか、それすらも心地よく感じる。
「そうだな。まぁそのかわり、来週は本社でプレゼンだから今週末には名古屋入りしないとな」
「名古屋には宮下を連れて行くんですか?」
「ああ。お前は残って例の見積もり上げといてくれ」
「わかりました」
吹き付けた風があまりにも冷たく思わず身を縮めたその時、背後を通過しようとしていたコツコツというヒールの音が、ふと止まった。
直後、二人の背中に探るような声がかけられた。
「もしかして……成瀬君?」
証と五十嵐は同時に振り返る。
そこには若い女性が立っていた。
暗さも合間ってそれが誰かすぐにはわからず、証は目をすがめる。
そうしてその顔を認識すると、証はハッと体ごと女性に向き直った。
「横山………?」
「ええ、久しぶり、すごい偶然ね」
そう言って笑顔で近付いてきたのは、かつて鷺ノ森で同級生だった横山 絵里香だった。
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