嫉妬とキスと

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(………妙なことになったな。さっさと陸と帰っとけばよかった……) 昔から自分をよく知る従兄弟は、変に察しがよく気を回しすぎるきらいがある。 憂鬱と後悔が胸を襲った時、証の目の前に派手なメタリックレッドのアウディが停車した。 ガチャリと助手席のドアが開けられる。 「乗って」 言われるがまま、証は車に乗り込んだ。 「しっぶい趣味だなー、お前」 「私の趣味じゃないわよ。今日はたまたまこれしか空いてなかったの」 証がドアを閉めると、絵里香はナビに手を延ばした。 「家どこ? 実家じゃないんでしょ」 「…………ああ」 シートベルトをしながら、証は絵里香に代わってナビの目的地をセットした。 音声案内に従って車を発進させてから、しばらくして絵里香がクスクスと笑い出した。 窓の外を眺めていた証は訝しげに絵里香に目を向ける。 「………何」 「だって、少しも懐かしがったりしてくれないのね。高校卒業して以来だっていうのに」 「……………」 「三ヶ月だけだったとはいえ、仮にも恋人同士だった訳じゃない?」 前方を見つめたまま証が何も言わないので、絵里香は肩をすくめた。
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