嫉妬とキスと

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「でもホントに偶然ね。ちょうど成瀬君に会いたいと思ってたから、会えてびっくりしちゃった」 「会いたい?」 「うん。ついこの前、秋に会って貴方のこと色々聞いたから」 「…………秋?」 「そう、是枝 秋」 その名を聞いた途端、証は思いっ切り眉間に皺を寄せた。 リクライニングを少し倒し、それに凭れて溜息をつく。 「………またあいつかよ」 うんざりしたような声を聞き、絵里香はふふっと肩を揺すった。 「随分秋にちょっかいかけられたみたいね」 証は腕を組み、じっと前を睨み据えた。 「あいつ、一体何が目的だったんだ?」 「ただ単に成瀬君に嫌がらせしたかったんでしょ。秋って何でも要領よくこなすけど、学生時代貴方にだけは敵わなくてずっと二番だったから、鼻を明かしたかったんじゃない?」 「……………」 「それに、初めて弱点らしきものを見つけたからそこを突いてみたくなったんでしょうね」 「………弱点?」 その時、絵里香の顔がスウッと真顔になった。 「橘 柚子」  
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