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「……………え?」
何故か口からは渇いた笑いが洩れた。
奈緒子はそれを痛々しげに見つめる。
柚子は気を落ち着けようと、ゆっくりと髪を耳にかけた。
「どういう…こと? 成瀬が、私達を不幸にしたって……」
「……………」
奈緒子はそこでようやく倒れたカップを受け皿に戻した。
愁いがちに目を伏せる。
「そう。……あなたは何も知らないのね。知らないから……成瀬の息子と一緒にいられるのね」
「……………」
柚子の胸が激しくざわついた。
証が柚子に隠していること一一。
それが今わかるのかもしれない。
けれど今それを聞いてしまったら……。
この先、自分は証と一緒にいることができるのだろうか……?
柚子はきつく唇を噛み締めた。
しかし、ここまで聞いてしまっては、もう後には引けない。
今またここで事実から目を逸らしても、いつかは知らなくてはならない日が来るのだから。
それに奈緒子の言った言葉の意味がひどく気になった。
成瀬が自分達を不幸のどん底に突き落としたとは、一体どういうことなのだろう……?
証が自分を三千万も出して買ったその裏には、一体何があるのだろう……?
柚子は意を決して顔を上げた。
射抜くように強く奈緒子を見据える。
「教えて、お母さん。……昔一体何があったのか教えて」
凛とした柚子の声を聞き、奈緒子は躊躇うように目をしばたかせた。
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