明かされる真実

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「元々いつも丸投げという形で工事を請け負っていたからね。 不幸にもそれを利用されて、上手く書類を改竄されて。 あたかも始めから談合に参加して、橘建設がその工事を入札する手筈になっていたように、成瀬によって事実を捩曲げられてしまったのよ」 柚子の拳が膝の上で小刻みに震え出した。 それがテーブルにまで移り、カタカタと小さな音を立てる。 「もしかしたら成瀬と警察の上層部とは蜜月なんじゃないかって私は踏んでるんだけどね。 でないとあんなに綺麗に事件が片付く訳がないと思うのよ。 ………まぁ、今となっては全てが薮の中。 この業界では有名な話だけど、世間的には橘建設が完全なる黒幕。 お父さんはなんとか無事だったけど、会社の幹部の何人かは逮捕されて。 ペナルティーで半年間の業務停止命令。 …………そこからはあんたも知っての通り、坂道を転がるがごとく、転落の一途よ」 「…………そんな……っ」 柚子はたまらず奈緒子の顔を睨みつけた。 「どうしてお父さんは本当のことを言わなかったの……!? 悪いのは全部成瀬グループなんだって……!」 「………だから蜜月だって言うのよ」 奈緒子は吐き捨てるように言った。 「名門中の名門、世界に名だたる成瀬グループと、たかだか一代で築いた一介の建設会社と。どっちの肩を持ったほうが特だと思う?」 「………………」 「警察だけじゃないわ。それから皆、橘建設にまとわりついた黒いイメージを嫌って、そっぽを向いたのよ」 そこで話し疲れたのか、奈緒子は二本目の煙草に火を点けた。  
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