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(そう……なの? 証は全部知ってて……罪滅ぼしのつもりで私を買ったの……?)
『俺は復讐の為にお前を傍に置いてる。……それじゃ駄目か?』
あの日、辛そうにそう言った証。
本当は、自分の父親が昔犯した罪を償う為に、あんな憎まれ口をききながら柚子を買ったというのだろうか。
(…………そうなの?)
だが、そうだとすれば納得もいく。
復讐だといいながら、柚子を傷つけることをどこかで恐れていることも。
奴隷だと言いながら、決して無茶な要求はしないことも。
どんなにひどいケンカをして飛び出しても、必ず探して迎えに来てくれることも。
体に触れても、結局最後までは手を出さないことも。
時折、切なげな瞳で柚子を見つめることも。
…………全てが、かつての父親の罪の償いなのだとしたら。
柚子の頬を熱いものが流れ落ちていった。
訳もわからず、胸が苦しくなる。
だが不思議と、証を憎いと思う気持ちは微塵も湧いてこなかった。
(…………証………)
柚子の涙を見た奈緒子は驚いて目を見張った。
ぎゅっと煙草を灰皿に押し付ける。
「柚子、あなた………」
「………………」
「成瀬 証のことが…好きなの?」
その問いに、何故か柚子は即答することができなかった。
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