明かされる真実

21/40

2391人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
カフェを出た柚子はマンションへ向かいかけてふと足を止めた。 時間は4時を回ったばかり。 まだ買い物も済んでいない。 もしかしたらじきに証が帰ってくるかもしれなかった。 だが、何故か足がマンションへ向こうとしない。 (………どんな顔で、証を出迎えればいいんだろう……) 会ってまず何を言えばいいのかもわからなかった。 自分達があんなに苦労したのは、全てが成瀬のせい……。 会社の経営が傾き、生活も苦しくなって、そのせいで母は出て行って……。 父は朝から晩まで働き詰めで。 更には体を壊し、まだ47才という若さでこの世を去った。 そうして自分は多大な借金を背負い、水商売を経て、あげくには風俗にまで足を踏み入れそうになった。 その全ての元凶が、証の父の裏切りのせいなのか……。 強い眩暈が再び柚子を襲う。 たまらず道の端に寄り、たまたま傍にあった街路樹に手をついた。 (………怖い。……証に会うのが怖い。お母さんからじゃなくて、証の口から本当のことを聞くのが怖い……) 証にそれを認められてしまったら……。 もう全てが崩れ去ってしまう気がする……。 (お母さんは当事者だから……話したこと全部が本当かわからない……) だが、証とて成瀬の人間だ。 自分の父の罪など、素直に認めるのだろうか。 (わからない。……本当のことが知りたい……) 歪む視界の中で、柚子はふらふらとバッグの携帯に手を伸ばした。 そうして萎えそうになる気持ちを奮い立たせながら、ある人物の携帯番号をプッシュした。  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2391人が本棚に入れています
本棚に追加